まちと人、つなげる設計

暮らしている街に、居心地のいい場所、何度も足を運んでしまう場所はありますか?

殺風景なコンクリートの道か、手入れされた街路樹のある道。門に閉ざされたエントランスか、人々が行き交うカフェのあるエントランス。高い塀に取り囲まれた家か、広い縁側で子どもからお年寄りまで自然に交流している家。

後者が好きだと感じる人なら、その風景の「作り手」と同じ価値観を持っているかもしれません。

『アワーデザイン』は、廣瀬(ひろせ・けん)さん、廣瀬春奈さん夫妻が営む一級建築士事務所。

主な仕事は、住宅やオフィスのワークプレイスなどの建築・空間設計。同時に、代表の廣瀬健さんは『まちづくり府中』のタウンマネージャーとしても活動し、地域活性のための空間活用やイベント企画など、まちづくりにも積極的に取り組んでいます。

「建築」と「まちづくり」。この二つを重ねることで、アワーデザインが目指す「まちと人がつながるデザイン」とは?

目次

建築+まちづくり

「豊かなパブリックライフのある街」で得た気づき

個と地域が重なるデザイン

建築+まちづくり

一般的には、建物を設計・デザインするのは「建築設計事務所」、人を集めたり空間活用の企画を立てたりするのは「まちづくり会社」であることが多く、それぞれが非常に専門性の高い領域です。

「行政や企業が手がけるトップダウン型の都市計画や再開発と、まちで暮らす個人の営みによるボトムアップ型のまちづくり。両者は別物と区切られがちですが、それらに携わる人が両方の視点を持つことはとても大切だと感じます」と、廣瀬健さん。

定義上は「個人に閉じず、公(おおやけ)に開いた空間」であり、「都市と人がゆるやかにつながる中間領域」だと廣瀬さんは話します。まさに、ハードとソフトがつながる場所なのです。

全ての人に開かれているはずなのですが、多くの人で賑わう場所もあれば、人がほとんど近寄らず寂れた場所もあるように思えます。それは一体なぜなのでしょう?

そう尋ねると、「公共空間の利用者の多くは、その街に暮らしている人です。ただ空間を作るだけではダメで、そこには街の人の視点に立った“まちづくり”が欠かせません」という答えが返ってきました。

「建物や設備といったハードと、暮らす人がどう動くかというソフト。その間を設計者が取り持ち、コーディネートすることで、もっと“人が活きるまち”になっていくのではないかと思います」

人が活きるまち。

その言葉には、アワーデザインが「建築」と「まちづくり」によって目指している未来の姿が現れています。

「豊かなパブリックライフのある街」で得た気づき

大学を卒業してから14年間、都心の設計事務所で働いていた廣瀬健さん。2017年4月にアワーデザインを設立し、住まいのある府中のまちで働くようになってから、より「建築」と「まちづくり」は重なるようになっていきました。

廣瀬さん達にとって、まちづくりの考え方の礎には、「豊かなパブリックライフ(都市生活)のある街」アメリカの都市・サンフランシスコからほど近い、カリフォルニア大学バークレー校への留学経験があります。

「バークレーでともに学んだ学生たちは、年代も20〜40代と幅広く、出身地や国籍も多様で、社会人経験を持つ人も多くいました。それぞれが全く異なる意見や背景をもち、講義ではこれまでの価値観が変わって、都市のデザインや公共性についての白熱した議論を繰り返しました」

やがて一年間の留学を終えた頃、それまでの街の見方が根本から変わっていることに気が付きます。

「多様な人との触れ合いで学んだことは、街のあるべき姿について、すぐに答えを一般化しようとする必要はないということ。正解は一つではなく、人の数だけ価値観があり、コミュニティの小さな活動から彩り豊かな街がうまれるということです」

まちの中で、多様な人々が自由に暮らしている様子は、廣瀬さんが目指すまちづくりの姿にもつながっていきました。

「人それぞれに幸せの形があって、多様性が共存しているからこそ、ユニークなまちになっていくと思っています」

廣瀬さんのその目線は、地域の人にも一目置かれる「バランス感覚の良さ」にもつながっているように思えます。

「個」と「地域」が重なるデザイン

「まちに人が集まる場所を作りたい」

それを思い描くことは簡単でも、地域の広場や公園といった公共空間は行政の管轄内にあることも多く、法的な手続きや関係各所との調整業務も大切です。

そんなときにも、廣瀬さんのバランス感覚は活きています。

「道路は車のためのもの、そんなイメージを変えつつあるのが『大國魂神社に続く参道でもあるけやき並木通りをオープンカフェにする』まちづくり府中でのイベント企画です。週末に歩行者天国になるけやき並木に、椅子やテーブルを設置する。それだけで、普段は車が通り過ぎるだけの道路に一休みする人や家族連れが集まって、いつも風景が“まちの居場所”に変わっていくんです」

多様な居場所をデザインする。

その想いは、アワーデザインが手がける、コミュニケーションが育まれる住まいの形や、多様な働き方を実現するワークプレイスのデザインなどにも反映されています。

そんなアワーデザインに住宅やオフィスワークプレイスを依頼するのは、自分らしい生き方や働き方にもこだわりを持っている人が多いと、廣瀬春奈さんは話します。

「建築は、自分らしい暮らしを支える手段であって、建築家は建物を造ることだけを目的にしてはいけない。建築家がそこにいる人や街のことを知らなければ、建築は活きない。だからこそ、その人がどのような想いや考えを持っているかを引き出すことを大切にしています。アワーデザインでは、お客様との対話の中から、求める住まいや場の答えを見つけていくことを大事にしています。何度も打ち合わせを重ねるうちに、お客さんが建築の素材や設計に詳しくなってしまうこともありますよ」

自分らしい生き方の中には、「暮らす・働く地域や環境とどのような関わりを持ちたいか」という視点も含まれます。

「密集した住宅街の中でも、ほんの少しのすき間を作るだけで光が入り、風が抜けます。隣家の採光や、窓の位置にも配慮するなど、隣人との関係性も大切です。軒先に季節の花を植えるだけで、周りの雰囲気は華やかになります。人の交流を育みたいなら、入り口にベンチを置いて、人が留まる仕組みを作ることも。人と街がともに良くなる未来を見据えて、人が活きる地域を作っていきたいと思っています」

人と人、人と街、それぞれの心地よい関係性。アワーデザインは、小さな営みから「住みたい・働きたい街」をデザインしていきます。

事業者紹介
この記事を書いた人
加藤 優/Yu Kato

「府中人」編集・ライター。歩いているだけでも楽しい府中のまちで、心ゆくまま働く人たちの話を聞くことが栄養になっています。

府中人
事業者名(店舗名)アワーデザイン一級建築士事務所
住所東京都府中市寿町1-4-3 ロイヤルプラザ府中704
地図
URLhttps://hour-design.com/